まことに困ったものである。そういえば前回、最初に「つくる会」教科書を採択した(直後に撤回)のは、同じ栃木県の下都賀地区だったが、栃木には県としてそういう傾向でもあるんだろうか。
今年の教科書展示は、たまたま間が悪くて1度しか見に行けず、問題の扶桑社版(「つくる会」教科書)も軽くざっと見ただけにすぎないのだが、その上での感想を記しておく。
4年前は、他社の社会科教科書がすべてB5判で、キャラクタ等を使ったヴィジュアルな構成になっていたのに対し、扶桑社版だけは唯一A5判で、体裁的にも内容的にも完全に一社だけ浮いていた。それに対して今回の版は、他社と同じB5判となっており、一見したところ受ける印象はだいぶ変わっている。また、「弟橘媛」「訓読みと訓読の混同」「アメノウズメのストリップ」「白旗書簡」「地中海で撃沈された架空の日本艦」など、前回さんざん莫迦にされた部分は、おおむね訂正されているようである。
とはいえ、フェリペII世と豊臣秀吉を対決させようとしたり、大西洋艦隊の日本派遣を特筆大書したり(さすがに「白船事件」という表記は消えている)するような変な部分はまだ以前として残っているし、なにより「公」「国」をむやみに強調しようとする基本理念は変わってない。
前回の採用阻止運動の中で、「初歩的な間違いを指摘する」という戦術が取られたのに対し、「短期的な戦術としては有効かもしれないが、次回の検定では指摘された間違いは直されるはずで、そうすると長期的にはむしろ相手(「つくる会」)を利することにならないか?」という意見があった。新版を見ていると、その危惧がどうやら当たってしまったのではないか、という気がする。体裁も他社と同じになったことで、かえって採用しやすくなってしまったのではないだろうか。