と、いきなり SCAPIN-677 といっても何のことやらわからないと思うが、 SCAPIN というのは GHQ/SCAP (連合国最高司令官総司令部、いわゆるGHQ)が日本政府に対して発した指令書で、日本占領政策の基本文書である。で、この SCAPIN-677 というのは、1946年1月29日に発せられた(2月2日に一般公表されたため、「2・2宣言」と呼ばれることもある)もので、連合国占領下における日本政府の実効支配範囲を定めたものである。
ちなみに、「幻想諸島航海記」の「中ノ鳥島(その1)」で言及しているのがこの文書ですね。
この文書には、沖縄・奄美諸島・小笠原諸島および千島列島を日本政府の実効支配範囲から除外することが明言されており、沖縄返還問題や北方領土問題を論じる際に無視することのできない代物である。また、リァンクール岩礁(竹島)が除外範囲に含まれていることから、韓国側による獨島=竹島の領有権の主張の根拠のひとつとなっている。
ここでこの指令の法的意義を論じることはしないが、おそらく GHQ/SCAP とていい加減な線引きをしたのではなく、それなりに根拠をもって線引きをしたはずで、その辺りの記録が占領期文書のどこかに残っているのではないかと思うんだが。そういう研究はあるんだろうか。ぼくが無知なだけかなあ。
……もっとも、実は SCAPIN-677 の除外範囲にはなぜか伊豆諸島全域も含まれていたりして、伊豆大島では慌てて独自憲法(!)制定に走ったりする、という事件も引き起こしてはいるんですけどね。
いや、自分で調べりゃいいのだが……占領期史料はマイクロフィルムの形で国会図書館の憲政資料室に収められているのだが、あまりに膨大すぎてどこから手をつけていいのかもわからなかったりするのである。
特集で取り上げたことがあったと思います。
ホーー、という感じで見た記憶があります。
>おそらく GHQ/SCAP とていい加減な線引きをした
>のではなく、それなりに根拠をもって線引きをし
>たはずで
かなりテキトー
外務省記録公開文書 リール番号A'-0121 コマ番号85「2.行政の分離に関する司令部側との会談」
http://gaikokiroku.mofa.go.jp/djvu/A0121/index.djvu?djvuopts&page=83
(昭和二十一年)二月十三日黄田連絡官GS「ロッヂ」大尉及び「プール」中尉と標記の件に関し第一回会談を行ひたり要旨左の如し
黄「本日は領土の歸屬問題乃至は本指令の妥当性等に付いては触れさることとし単に疑義に付質問を為さんか為参上せり」
米「本指令は単なる連合国側の行政的便宜より出てたるに過きす従来行はれ来りたることを本指令に依り確認せるものなり即ち其の他はSCAPの所管するところにあらす例えは大島はCINPACの所管。鬱陵島は第二十四軍団の指揮下に在り従って本指令に依る日本の範囲の決定は何等領土問題とは関連を有せす之は他日講和会議にて決定さるへき問題なり」
SCAPIN-677 自体は事後追認(「従来行ハレ来リタルコトヲ本指令ニ依リ確認セルモノナリ」)としても、なぜこのような線引きになったのか、という問題は依然として残るわけですが。個々の(たとえば伊豆、小笠原、奄美……etc.)事例について検討したほうがいいのかな。