2011年03月14日

「政治とカネ」という表現

 さて、震災のためにどうでもよくなってしまった気がするのですが、そもそも地震が起こったときに何を調べてたかというと、 Twitter で書いた次の件が気になって、読売新聞(ヨミダス文書館)と朝日新聞(聞蔵IIビジュアル)で全文検索をかけていたのですね。

# 「政治とカネの問題」という言い方がかなり気持ち悪くて仕方ない。うさんくさい。いつから定着してしまったんだろう。 10:49 PM Mar 7th webから

 まず読売新聞(1986年〜)。分量が多いので3年ごとに区切って、単純検索で本文に「政治とカネ」という表現がどのくらい使われているのかを調べたもの。(1986年はゼロ。1996〜99年だけ4年間になっているが、間違いに気付いて訂正しようと思った矢先に地震が襲って来た。)

年次政治とカネ政治と金
1987-1989 49 36
1990-1992 109 41
1993-1995 115 40
1996-1999 44 24
2000-2002 364 55
2003-2005 496 62
2006-2008 977 76
2009-20112016 81

 次に朝日新聞(1984年〜)(追記:『AERA』『週刊朝日』を含む)。

年次政治とカネ政治と金
1984-1986 7 0
1987-1989 100 45
1990-1992 152 55
1993-1995 173 86
1996-1998 44 20
1999-2001 90 23
2002-2004 614 115
2005-20071153 96
2008-20101961 145
2011 118 3

 各記事の詳細なチェックを行っていないが、1980年代末〜90年代初頭は、明らかにリクルート事件(1988年)や東京佐川急便事件(1992年)とリンクしている。橋本龍太郎内閣期(1996〜98)、小淵恵三内閣期(1998〜2000)あたりでは減少、安倍晋三内閣期(2006〜07)あたりから急増しているようである。3年ごとでなく、もうちょっと細かく区切ってみないと、あまり確実なことはいえない。

 また、『朝日新聞』での見出しの初出は、1952年10月21日付夕刊のコラム「今日の問題 政治と金」(コラム)で、昭電疑獄(1948年)に関連した内容。「政治とカネ」という表現では、1956年4月6日付朝刊の都留重人による署名記事「危機に立つ民主主義(4)驚く心こそ必要 ひどすぎる政治とカネの悪縁」。いずれにせよ、もともとは明白な汚職と関連した表現であったことは間違いない。まあ、だから何だ、といえるほどの分析はできていないが。

 ついでに「血税」の件。

# 現代的な意味での「血税」という言葉の使い方もかなり気持ち悪いと思う。もちろん語源的には徴兵制度のことなのだが(そんくらいみんな知ってるよなぁ)、それがいつから「血の出るような思いで納める苛酷な税」(『広辞苑』第6版による第2義)という意味で使われるようになったんだろう。 10:51 PM Mar 7th webから

 『朝日新聞』1951年4月8日付朝刊の「声」欄に、「血税の行方」という投稿が載せられている。案外古い、というより、もしかしたら戦前に遡る表現なのかもしれない。

(追記)……と書いてから、ふと思いついて神戸大学新聞記事文庫で検索をかけてみた。なんだ、1913年の『報知新聞』で、すでに「国民の血税を以て一私設会社の私服を肥やすは断じて賛す可からざる所」という表現が使われているではないか。(ID 00139248)

posted by 長谷川@望夢楼 at 23:32| Comment(7) | TrackBack(0) | 歴史の話 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
「政治とカネ」、難しい問題ですね。個人的には,政治にはお金が必要と思う次第です。ただ度が過ぎるのは問題と思います。「白河の清き流れにすみかねて田沼の水ぞ恋しき」の狂歌を思い出しました。うろ覚えで書きました。間違ってたらごめんなさい。松平定信も田沼意次も,両方良いところがあると,自分は思っております。どっちが良い政治かと,正直悩んでいます。政治からお金を排除して,戦前の軍部主導政治が来るのは,嫌だなあと思っています。
血税が1913年の報知新聞にあった事に驚きました。ひょっとして日露戦争の影響があったかもしれません。血税と聞いて,ビスマルクの鉄血政策演説と血税徴兵反対一揆を思い出しました。血税について,図書館に行って勉強しようと思います。
Posted by ダグラスリーフ at 2011年03月15日 00:33
「白河の・・・」についてネット等で調べてみたらいくつかありました。

@白河の清きに魚のすみかねてもとの濁りの田沼こひしき
A白河の清きに魚も住みかねてもとの濁りの田沼恋しき

他にもあるようです。
勉強します。
Posted by ダグラスリーフ at 2011年03月15日 00:56
上記について,文章訂正します。
鉄血政策演説→鉄血演説に変更します。
Posted by ダグラスリーフ at 2011年03月15日 02:28
もともと、このことを思いついたのは前原前外相辞任の一件です。あの「外国人献金」は現行法では確かに違法だけれども、どう考えたって汚職という話ではない。それを「政治とカネ」という語り方で報道するのはおかしくないか。ロッキードやリクルートのような大規模汚職とは明らかに質的に違う問題が、「政治とカネ」という、なんだか安易な表現でひとくくりにされてないか。という疑問がありました。あ、今思いついたが、鈴木宗男事件(2002年)がひとつのターニングポイントになったんじゃないかなあ。
Posted by 長谷川@望夢楼 at 2011年03月15日 20:27
なるほど前原外相辞任ですね。そういえばそうですね。個人的には,前原さんは,もう少しソフトに動いてほしいなあと、いつも思う政治家でした。これは外国人献金を口実にした権力闘争だと,個人的に思います。少数派である在日朝鮮人及び在日韓国人に対する,不当な差別問題が絡んでいる気がします。嫌な感じです。前原さんは、うかつだと思います。前原さんは,これを機会に反省してくれたらと思います。
鈴木宗男事件(2002年)、久しぶりに、昔を思い出しました。忘却がひどくなりました。困ったものです。これは,小泉総理(当時)の権力攻撃の一環だと,個人的に思います。鈴木宗男さんは,小泉総理にとって多分重荷と言うか,目の上のたんこぶになっていたのではと思います。鈴木宗男さんは北方領土問題解決に意欲を燃やしていました。小泉さんは権力政治家です。たぶん鈴木宗男さんが北方領土問題で点数をあげられたら,自分の面子丸つぶれと感じたのではと私は考える次第です。そこで鈴木宗男グループを潰すために,小泉総理グループがこさえたのが「政治とカネ」を使って攻撃する事ではないかと,私は勝手に思っているところです。鈴木宗男さんはたたき上げの人でした。確かにお金に100%クリーンな人ではないと思います。検察は、警察は、時の政府に従順です。「政治とカネ」は過去色々な事件で使用されてきました。近年の「政治とカネ」は,これ,権力闘争をカモフラージュ、すなわち隠ぺいするために使われている気がします。「政治と金」だと何かきつすぎるので,わざと「政治とカネ」を使っている気がします。
思いつくまま書きました。
独断と偏見が混じっている文章,お許しください。
もしかしたら,焦点はずれまくりの文章かもしれません。
その時はごめんなさい。
雑文、乱文お許しください。
長谷川さんの御多幸を祈ります。
Posted by ダグラスリーフ at 2011年03月15日 23:14
前原外相辞任について思う事。後援会に相談したのかなあ、と思っています。後援会と相談して、辞任したのか気になっています。後援会や応援する人達と相談したうえで,辞任したのならば、やむを得ないのかなと思うところです。個人的には,後援会に相談して了解を取り付けたうえで,外相を続けるのもよし,総理に従い辞任するのもよし,の行動をとっても良かったのにと思います。野党の追及が厳しすぎるようでしたら,後援会の了解をとり,いったん議員辞職して,出直し選挙すれば良いと思います。そこで思いを選挙区民に言えば良いと思います。「確かに外国人献金を受けました。在日の人です。法律違反は認識しています。でも後悔していません。献金してくれた人は,昔から恩義を受けた人だからです。今後は気をつけます。一生懸命頑張りますから,宜しくお願いします。」などと主張すれば、選挙区民も分かる人は分かると思います。辞任が速やか過ぎたのが,妙に気になっています。これまた雑文お許しください。
Posted by ダグラスリーフ at 2011年03月16日 00:50
福島第一原発が早くおさまってほしいです。
現場の方,必死だろうなあと思います。
全ての避難所の方,お見舞い申し上げます。
何もできないのが残念。
募金活動に参加したいと思います。
怪しげな団体もあるので,募金については気をつけたいと思います。
Posted by ダグラスリーフ at 2011年03月17日 07:07
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