[金銀島【第2章】ワークワークの不思議な樹]を掲載。『千夜一夜物語』にも登場する、中世アラビアのなかば伝説的な黄金島、ワークワーク(ワクワク)の話です。あわせて[はじめに][第1章]にも手を加えました。
できれば「西遊記」放映中に掲載したかったな、という気もするのですが、間に合いませんでした。もっとも、じつはテレビドラマの方は、予告篇を見ただけで観る気が失せてしまい(いや、だっていきなり三蔵法師御一行が揃っているんだよ?)、まったく観ていないんですが。なお、「西遊記」といったい何の関係があるのだ、と思われた方は、ぜひ本篇をお読みください。
まあ、むしろ藤崎竜『Waqwaq ――ワークワーク――』(2004-05)の連載中に掲載しておけばよかった、という気もしないでもないですが。
次回は「ジパング何処」。いちおう6月ごろを予定してます。
……しかし、こういうのばっか書いてると、自分でも自分の専門がなんなのかわからなくなってくるな。
ちなみに、稗田礼次郎が「生命の木」(諸星大二郎『妖怪ハンター 地の巻』所収、集英社文庫、2005)の中で「キリシタンの弾圧下 殉教をかくごでおおぜいの宣教師が日本に潜入したのはなぜか それはそのころヨーロッパに 日本には金銀島があってそこには生命の木がはえているという伝説があったからだ」と語っている理由は、本稿を最後まで読んでいただければおわかりいただけるかと思います。……なんちって。いやまあ、実際に諸星大二郎氏がワークワークの話をご存知の上で、あのような話を書かれたのかどうかは存じませんが。
同作品を映画化した『奇談』はぼくも観ましたが、ひとつ残念だったのは、この金銀島のくだりや、『天地始之事』(拙稿「万里ヶ島」を参照のこと)のことについては、稗田礼次郎の台詞で簡単に済ませられていただけで、まったく掘り下げられていなかったことですね。プログラムでは全く言及されていない上に、原作者インタヴューでは、インタヴュアーがぜんぜん関係のない青森の「キリストの墓」なんぞを持ち出しているところをみると、もしかして映画制作者はどなたもこのあたりの話を知らなかったんでしょうか?
諸星先生の件、今、集英社文庫版の「妖怪ハンター」シリーズでは省かれていますが、底本となった版型の大きいほうの本(ソノラマだったでしょうか)では、作者自身のあとがきと参考文献が載っていて、それには、お書きになられている「金銀島」2章の参考文献に類するような本がいくつか上げられていたはずです。
ちなみに、集英社文庫版では「天の巻」巻に、「木を巡る対立」と「天孫降臨」からの抜粋が掲載されていて、ここには、「生命の木」神話に関する論考や、瓜子姫伝説に関する柳田学説への言及などがかかれています。
集英社文庫版では、「孔子暗黒伝」にのみ、参考文献(の抜粋省略)が掲載されています。
「生命の木」の発表時点(1976)では何が参考にできたのかな、と思ったのですが、考えてみりゃ澁澤龍彦御大がとうにネタにしてるし、べつに何の不思議でもないか。